2024年4月1日 校名を変更しました(旧校名:呉竹鍼灸柔整専門学校)
鍼術は、古代中国に発生した治療技術です。初めのうちは、薄くとがった石の先端で腫れ物やできものなどをで突いたり切ったりしていましたが、次第に動物の骨や陶器の破片などを利用した鍼が使用されるようになりました。春秋戦国時代以降、冶金技術の進歩とともに金属製の鍼が使われるようになり、経絡や臓腑、陰陽などの考えと結びついて鍼治療が確立されていきます。
東洋医学の考え方の1つに「気の思想」があります。この思想が、後に経絡という考え方に発展していきます。人体には気(エネルギー)の通り路があるとされ、その路には気が溜まりやすい、あるいは気が漏れやすい、反応が出やすいツボ(経穴)があることが分かりました。経絡は、五臓六腑といわれる体の内部の臓腑器官と、体の外部である皮膚に結びついていて、内臓の異常が体表の変化として表れ、特にツボ(経穴)に敏感に表れることが分かっています。例えば、胃の調子が悪いと背中の左側がはってくることを経験した皆さんもいらっしゃるでしょう。この異常な反応の出ているツボを刺激することで、内臓の異常を調整できるという重要な発見がありました。この成果を今に伝える書物が、中国医学の現存する最古の文献 「黄帝内経(こうていだいけい)」 です。
中国で完成された鍼術は6世紀ごろ日本にもたらされ、日本の風土、文化と融合しながら独自に発展していきます。特に大きな変革があったのは江戸時代で、鍼管という管の中に鍼を入れて打ち込む管鍼法という方法が発案されたことでした。皮膚を刺す痛みが少なく初心者でも鍼を刺せることから、この方法が普及し、現在でも主流となっています。また日本の優れた技術力によって、患者負担の少ない髪の毛程度の細さの鍼が作られるようになりました。こうして、日本人の体質や特性にあわせて改良を重ね、世界でも例を見ない日本独自の繊細な鍼術へと発展していきました。
ところで、鍼はなぜ効くのでしょうか。鍼は数千年にわたる膨大な臨床経験に裏付けられた医療体系と言えますが、現代に至るまでその基礎的研究はほとんどなされませんでした。つまり「こうしたら、こうなる」ということは経験的に分かっていても、「なぜそうなるのか」はよく分かっていませんでした。
しかし近年、鍼施術の効果に関するさまざまな研究が進められ、そのエビデンス(根拠)が明らかになりつつあります。鍼の刺激により、神経系、内分泌系、免疫系などに複雑に作用し、その結果、血流改善、内臓機能の調整、鎮痛作用、免疫力の向上など、多くの効果があることが分かっています。疾患別に見れば、頭痛・片麻痺などの「神経系疾患」、変形性関節症・関節リウマチなどの「運動器系疾患」、高血圧などの「循環器系疾患」、気管支喘息などの「呼吸器疾患」、胃炎・便秘などの「消化器疾患」、神経因性膀胱・EDなどの「泌尿・生殖器系疾患」、月経痛・不妊などの「婦人科系疾患」、めまい、耳鳴りなどの「耳鼻咽喉科系疾患」など幅広い疾患に対して効果があるとされています。
今後さらに、鍼治療のEBM(Evidence-Baced Medicine、根拠に基づく医療)が確立されていけば、人々の健康増進、病気の治療や予防により一層貢献できることになるでしょう。